大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)189号 判決

被控訴人は昭和三十三年十二月二十七日付翌二十八日控訴人に到達の書面で前記延滞賃料合計四万五千円を昭和三十四年一月三十一日限り支払うべく、同日までに支払のないときは本件建物の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが、控訴人はその支払をせず催告期間を経過したので、その経過とともに右契約は解除された旨主張するのでこの点について判断する。

控訴人は右書面は期間を定めた催告の記載を欠くから、解除は効力を生じない旨主張するので検討するに、成立に争ない甲第一号証の一の記載によれば、前記書面には「昭和三十三年十二月分までの賃料合計四万五千円の延滞があり、しかも同年十一月中に以後毎月十六日に金二千円二十九日に金二千五百円ずつ必ず延滞賃料を支払うことを約したのに、その支払がないので昭和三十四年一月三十一日限り本件建物の明渡をされたい」趣旨の記載があり、右は昭和三十四年一月三十一日までに延滞賃料を支払はないときは同日限り右建物の賃貸借契約を解除する旨の意思表示を含むものと解されるのみならず仮りに右の書面には被控訴人主張のように期間を明示した催告ありとみることが困難であるとしても、前記当事者間に争のない賃料延滞の状況といずれも成立に争ない甲第三、第四、第六、第七号証の各記載に原審における被控訴人本人尋問の結果を綜合すれば、昭和三十年以降の賃料延滞の状況は前記のとおりであるが、それ以前においても控訴人は昭和二十八年九月分を翌二十九年十月二十九日に漸く支払つた有様で以後においても一度も期限内に賃料の支払をしたことはなく、被控訴人の再三の請求にも拘らず時を経るに従い遅滞の程度が甚だしくなつたものであり、その間昭和三十年十二月中には、当時の延滞賃料一万四千五百円につき被控訴人において支払命令申立の手続までしたり、控訴人において延滞分につき必ず支払をする旨の誓約書を被控訴人にあて差入れたりしたこともあつたが、その後も控訴人の賃料延滞は少しもあらたまらず、被控訴人の再三の請求も効なく、その延滞の額はかさむ一方で、昭和三十三年十一月当時には四万円を超える滞納となつたので同年十一月六日には被控訴人が厳重な請求をした結果控訴人は延滞分を毎月十六日及び二十九日の二回にそれぞれ二千円及び二千五百円ずつ支払う旨誓約した(この時被控訴人において期限の猶予を与え遅滞が解消したとは認められない。)が、これもまた全然履行されなかつたので被控訴人はたまりかねて同年十二月二十七日付の書面で前認定の如く契約解除の意思表示をしたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

前認定の再三にわたる催告はいずれも期間を明示しないものであつたと認められるが、かような催告でも、債務の履行期の後において再三にわたつてなされかつ右催告後相当の期間が経過したときは、催告期間の明示されていないことを理由に解除権の発生を否定すべきものではないと解されるのであるが、本件におけるように、昭和二十八年九月以降五年以上にわたり常に履行遅滞の状態が続きその間絶えず履行の催告がなされて来たに拘らず、むしろ遅滞の程度は逐次甚しくなり、遂には約二年六ケ月分に相当する賃料合計四万五千円程度の延滞額となつた場合は正しく右に述べた催告後相当期間の経過により解除権の発生を肯定すべき場合にあたるというべきである。

(谷本 野本 安岡)

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